東部海浜開発事業・記者会見

第一区域は
沖縄市の未来図を
市民と共に描きたい

 福岡高裁那覇支部が沖縄市や県からの公金支出を差し止めた中城湾港泡瀬沖合埋め立て(沖縄市東部海浜開発)事業について、東門市長は十月二十六日、市役所で記者会見を開き、「控訴審判決を尊重し、上告はしないこととする」とし、また現在進めている第一区域については「土地利用計画を策定し、埋立免許及び承認の変更に向けての取り組みを進めたい」と述べた。

▲記者会見で東部海浜開発事業について
 市長見解を説明する東門市長

 市庁舎で午後二時から行われた記者会見で東門市長は、「泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求告訴事件に係る市長見解」の文書を各記者らに配布した。ここでは、文書の内容を抜粋して記載する。
 去る十月十五日に福岡高等裁判所那覇支部において「泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求告訴事件」にかかる判決が言い渡されました。
 告訴審判決は「市長は沖縄市東部海浜開発事業に関し、本判決確定時までに支払義務が生じたもの並びに調査費及びこれに伴う人件費を除く一切の公金を支出し、契約を締結し、又は債務その他の義務を負担してはならない」としています。
 裁判所は、このような判決に至った要因として、沖縄市が策定中の土地利用計画の全容が明らかになっていない現段階において、これに経済的合理性があると認めることはできないと述べるとともに、一方においては、調査費及び人件費の支出は違法とせず、沖縄市が土地利用計画を策定することを認めています。
 告訴審の判決について市長としての見解を説明します。
 結論から申し上げますと、告訴審判決を尊重し、上告はしないことといたしました。そして、判決に示されているところに基づき、土地利用計画を策定し、経済的合理性を含めてその全容を明らかにすることで、沖縄市の未来へとつなげてまいります。
 したがいまして、現在進めている第一区域の土地利用計画しっかり策定し、埋立免許及び承認の変更に向けての取り組みを進め、その後の土地利用の実現をめざすことといたしました。
 第二区域については、方針表明でも明らかにしましたように、新たな基地の提供や干潟の課題解決は極めて厳しく、中止をもって臨むことが、当該事業における方針実現への現実的なあり方だと考えます。
 このような判断に至った理由としましては、まずはじめに、私は平成十九年十二月五日の東部海浜開発事業における方針表明が、今回の判断の基本であり、最も大切な拠り所とすべきであると考えたからです。
 一切の公金支出を差し止めた原審の判決を不服とし告訴いたしましたのも、方針実現の道が閉ざされたということであり、方針実現に向けて力を尽くすことが市長としての責務だと考えたからにほかなりません。
 今もその姿勢に変わりはなく、東部海浜開発事業は「沖縄市の経済発展につながるのか」「干潟等の自然環境は守れるのか」という課題解決に向け、悩み苦しんで出した方針の実現に、今後とも取り組んでいくことが市長としての私の使命であり、市民との約束を果たすことになると確信しているところです。
 次に、今回の判決が「本件海浜開発事業の土地利用計画を見直し、本件埋立免許及び承認の変更許可を求めるためには、所要の調査が必要となることから、そのための調査費及びこれに伴う人件費に係る財務会計行為をすることは、違法とはいえない」とし、調査費及び人件費の支出を認めていることです。
 このことは、より具体的な計画策定の作業が必要であるということを司法が示していることを意味し、その方向に基づきできうる限りの努力を重ねるべきとの考えに至りました。
 三つ目に、控訴審において、きわめて重要な役割を担うべき土地利用計画を裁判所は市民参画等による取り組みとして、市の努力は認めているものの、未だ完成には至っていないことをもって判決を左右する結果になったことです。
 市は、活性化一〇〇人委員会や計画検討調査委員会を設置し、経済的合理性を含め、平成二十二年三月の土地利用計画の策定に向けて取り組んでいる最中であり今後、計画を完成させ経済的合理性を含めて、その全容を市民に明らかにしていく責務があると考えています。
 そして、経済的合理性をより高めるためにも現在の計画に加え、新たな方策等を盛り込み総合的な検証を深めていくとともに、第一区域を有効に活かすアクセス等についても、国・県・市が連携をしながら、当該事業の実現に向けて協議を重ねていくことが重要だと考えます。
 私としましては、平成十九年十二月の方針に基づき、何としても第一区域は沖縄市のために活用していきたいという強い思いがあります。今回の判断もこのことに尽きると言っても過言ではありません。
 私の願いは「市民一人ひとりの幸せ」と「沖縄市の発展」です。その願いを現実のものにするために今、何ができるのか。そして、市民の皆さまが心を一つに沖縄市の未来図を共に描き、その実現に力を合わせていくためには、市長として何をすべきか、そのことを常に自分に言い聞かせながら、これからも市政運営に全力を尽くしてまいります。
 市民の皆さまには、これからもご苦労をかけますが、今回の判断にご理解を賜り、方針実現に向けて一層のお力添えをたまわりますようお願い申し上げ、私の説明とさせていただきます。

二一年十月二十六日
沖縄市長 東門 美津子

 東部海浜開発事業は、その歴史的経緯をはじめ、経済活性化や環境への市民の思い、また新港地区の振興を含めて国、県との関係など、様々な状況が混在しながら今日に至っており、問題は複雑です。市では事業に関する全ての情報を公開し、また今後の事業についてどうあるべきかの結論をだすため、経済や環境問題の専門家と市民代表による検討委員会の設置を約束し、その後「東部海浜開発事業検討会議」を設置し、十三回の会議を経て、庁内での検討、各団体や有識者等の方々からの意見聴取など多様な立場からの見解を伺ってきました。
 その結果をふまえ現在のスタンスに至っており、環境の問題についても、干潟をいかに守るかということを常に念頭に置きながら、人々の営みと経済的発展、そして沖縄市が未来に向かって拓かれていくという、本質的な問題と向き合い環境への対応にはさらに知恵をだし、力を入れていくことが最も大切であると考えています。



▲市議会や市の状況、いろいろな方々の意見を聞く中で(1区推進、2区困難)結論に達したと
説明をする東門市長(写真右)。
 東部海浜開発事業をめぐり東門市長と意見を交わす前原誠司沖縄担当相
(10月4日・市産業交流センター)(写真左)

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