更新日:2025年12月8日

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2025年度の一品紹介

 手まり

手まり

明治の終わり頃まで、女の子たちはまりつき遊びに使う手まりを自作していました。

ソテツの実の周りから集めた綿毛や海綿などを芯材にして、糸をぐるぐる巻きつけてまんまるの球を作り、いろいろな色の糸で模様を刺繍します。

手間のかかる手まりは大正の初め頃に市販のゴムまりが出回るとすたれていきました。また、手まりはゴムまりほど高く弾みません。家の中で、座った姿勢でトントントンと速いテンポでついて遊ぶものだったようです。

展示されている手まりは沖縄こどもの国にあった「手づくり郷土館」閉館のときに譲り受けたものです。

飾り物として作られたと思われますが、大まかな作りは昔のやりかたをなぞっています。

★このうち一個に「コザ」と刺されています。探してみてね!★

 オオキバヘビトンボ(標本)

ヘビトンボヘビトンボの仲間は、幼虫は川で育ち、蛹を経て翅のあるこの姿になる水生昆虫です。

オオキバヘビトンボは中国西部からベトナム、インドにかけて分布する種で、大きくてかっこいいですね。この標本は昨年の「地味な虫」という展示会で展示しようと個人的に購入しました。

「地味な虫」はヘビトンボのように名前も聞いたことがないような一般に知られていない虫を集めて、昆虫の多様性に注目してもらおうという展示会でした。ヘビトンボは特に好きな虫で、ぜひこの標本を見てほしいと買ったのですが、実際に並べてみると、小さくて地味な他の虫たちに対して、明らかにういていました。この標本が人気にはなりそうですが、他の虫たちを見てもらえないのではと心配になり、泣く泣くお蔵入りにしました。

 クバオージ

クバオージ

暑い季節が来たので、クバオージを展示します。クバオージは、クバ(和名はビロウ)の葉で作られた扇(おうぎ)=オージです。

沖縄市では、クバはちょっとした林で見ることができる、とても身近な植物で、「市民の木」にも指定されています。

クバオージの作り方はとても簡単で、クバの葉を半分に裂いて適当な大きさに切り、畳などで押すだけです。上手に葉を伸ばして作りたいときには水に浸して、いったん葉を伸ばすこともあります。

うちわや携帯型の扇風機が増えたことで、クバオージはエイサーぐらいでしか見られなくなりました。博物館でクバオージを作りすぎた時、青年会に声をかけると、喜んでもらってくれることもありました。

 土器をステキに装飾

ステキ土器

シンプルな土器もステキですが、文様を施された土器もステキですよね。

土器の形や文様にも流行りすたりがあって、時代やその土地によってもさまざまな文様があります。沖縄から出土する土器は本土に比べるとシンプルな気がしますが、よく見ると文様のバリエーションは豊かです。

今回はどんな道具を使って文様を付けているのかに焦点をあててみました。

例えばリュウキュウチクでは、その先端をどう割くか、どう土器に押し当てるかによって文様は変わってきます。貝殻も、どの部分をどの角度で土器に当てるかによって文様は変わってきます。指を押し当てたときの指痕も立派な文様になるんですよ。

また、口縁を山形にしてみたり、突起を付けてみたりと、装飾する個所によっても工夫がみられます。

 

 ヒメミズカマキリ(生体)

ヒメミズカマキリ(生体)

展示会「カマキリvsナナフシ」で標本を展示していたら、「生きているところを見てみたい!」とリクエストされたので、採集してきました。

ミズカマキリは細長い体にカマになった前あしと、カマキリのような特徴がありますが、水中にすむカメムシの仲間です。やはり肉食で、小さな水生昆虫や小魚などを捕まえて食べます。

カマキリのようなアゴではなく、カメムシの仲間に共通したストローのような突き刺す口をしており、消化液を注入して獲物の体内を溶かして吸って食べます。腹部の先には長い呼吸管があり、水面につけて空気の交換をしています。

ヒメミズカマキリは1980年代までは沖縄市でも記録がありますが、現在沖縄島内では見られる場所が少なくなりました。内地のほうには呼吸管を含めると10センチメートルほどになるミズカマキリや、八重山諸島にはよく似たマダラアシミズカマキリが分布しています。

 注口土器?いいえ、高師小僧です。

高師小僧八重島貝塚の遺物整理中に不思議な遺物を見つけました。その遺物は沖縄では出土例がない「注ぎ口の付いた土器」に似ており、見つけた時は沖縄で初めて出土した!?と思いました。しかし調べてみると残念なことに注ぎ口ではなく「高師小僧」(たかしこぞう)が付いた土器でした。

高師小僧とは褐鉄鉱(かってっこう)という鉱物 で、地下水に溶けていた鉄分が、地中の根や茎のまわりに集まり固まったものです。

高師小僧という名前の由来は、愛知県豊橋にある高師原(たかしはら)の土が雨で流された後に露出した高師小僧の様子が、幼児や動物に似ていることから名付けられたといわれています。

昔の本土では薬として使用したり、戦時中には鉄不足から高師小僧を原料とした鉄作りが試されたものの、あまり質の良い鉄が出来ず実用化に至らなかったそうです。

 かわいいガラス瓶

ガラス瓶

 

ガラス瓶拓本

発掘調査で見つかるものといえば、土器や石器・貝などで作った道具を思い浮かべる人が多いかもしれません。近代(明治~戦前)の遺跡を調べるとガラス瓶がたくさん出てきます。

プラスチックが無かった頃はガラス瓶をリサイクルしながら大切に使っていました。

中身は飲み物・薬・インク・化粧品など当時の暮しに身近なものです。

その頃はガラスに空気が入り、合わせ目や厚さが不揃いなものが多くありました。

表面に文字を浮かび上がらせたものもあり、現在と違うフォルムやネーミングセンスに心惹きつけられます。瓶の中身を光から守るため色の種類も大正の終わりから増えました。

口の形もコルク・金属・ガラスなどの蓋に合わせて工夫が感じられます。小さな瓶の中に当時の美意識がぎっしり詰まっています。

 タイワンモクゲンジとニセアカヘリカメムシ

タイワンモクゲンジとカメムシ1

タイワンモクゲンジとカメムシ2

タイワンモクゲンジの幹にびっしりとついたニセアカヘリカメムシ(那覇市にて)

この時期になると、ピンク色の小さな紙風船が鈴なりになったような木があります。

ムクロジ科の樹木、タイワンモクゲンジです。すごい名前ですが、ムクロジの中国名「木患子」を“モクゲンジ”と読んだことが由来のようです。

台湾から沖縄に持ち込まれ、街路樹などとして植えられます。市内では明道公園の近くや市役所の前の広場などに植えられていますね。

紙風船のようなものは果実で、花は黄色で9月ごろ咲きます。この木に、赤い虫がたくさんついていることがたまにあります。ひどいところでは、幹の一部がイチゴジャムをこぼしたように真っ赤に見えるほどです。

調べてみると、ニセアカヘリカメムシという虫でした。タイワンモクゲンジの木の汁のほかに、昆虫を捕まえて吸汁することもあるようです。

お問い合わせ

教育部 文化財課 

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