語り続けよう平和への鼓動

「沖縄戦の実相にふれるたびに戦争というものは、これほど残忍でこれほど汚辱にまみれたものはない。あらゆる戦争を憎み平和な島を建設せねばと思い続けてきました。これが、あまりにも大きな代償を払って得た、ゆずることのできない私たちの信条なのです」。

世界へ、次の世代へ平和な地球を引き継ぐ

私たちは武器を持たぬ歴史を歩みながら、基地がある故にこそ、憲法の持つ平和主義と理念を認識し、 平和な地球を実現する発信地として自覚しなければならない。

▲素人とは思えぬ迫真の演技に思わず涙を流す観客も─

▲2歳から70歳までの市民が参加、息の合った演技に会場から大きな拍手が沸いた

「泣かすな、居所がばれる。泣く子は殺せ」―一人の少女が見た沖縄戦を通して、戦争とは少女にとって何だったのかを問いかける、市民構成劇「りゅう子の白い旗」が平成八年に市役所市民ロビーで上演された。
 その様子を特集号の一環として掲載する。
 集まったのは三歳から七十歳までの出演者五十三人。スタッフ二十人。夏休み期間中、本番に向け猛練習の日々が始まった。市内の中学校や老人ホーム、中頭会館などの場所を借りながら午後六時から九時までの週三回のけいこが続いた。
 子どもたちが多いため演技指導が大変である。演技への集中がたりない。演出家はいらだつ。しかし、じっくり粘り強く教えていかないといけない。自分がそいう立場だったらどうするだろう。どういう行動をとるだろうか芝居のノウハウから教えていく、そんな日々を重ねる。
 本番の五日前、賛助出演の俳優、北村三郎さんを交えてのけいこが始まる。しかし、まだしっくりこない。いらだちのジレンマが続く。本番の日がやって来た。会場には市民ロビーを埋め尽くす二百五十人余の市民が詰めかけた。
 のどかな沖縄の情景から劇は始まった。「島の人たちは祖先をうやまい、人の命の情けをなによりも大切にしていた」静かに流れる、ゆるやかな空気と音楽。すると一転、激しい音とともに誰もが目をうたがうかのように、一瞬にして周りは闇の世界。アメリカ軍の飛行機から爆弾の雨が降る。家が焼かれ、真っ赤なデイゴが血の赤に染まる避難壕へ逃げる人々。しかし、そこから壕の中での苦しい日々が続く。「泣かすな、居所がばれる、泣く子は殺せ」日本兵が軍刀を抜き振り上げるー。水がほしい、手足が腐れていく。壕の中では残酷な悲劇が繰り返される。「住民の皆さん、日本は負けました。戦争は終わりました。安心して出てきてください」の声が聞こえてきた。
 「よし、天皇様やお国のためだ女、子どもを先に行かせろ、まず、こいつを先に歩かせろて、敵兵が撃って来るかどうかを確かめるんだ」(りゅう子が引っ張りだされ白い旗を持たされ、ゆっくりと歩き出す・・・・・。
 「沖縄戦の実相にふれるたびに戦争というものは、これほど残忍でこれほど汚辱にまみれたものはない。あらゆる戦争を憎み平和な島を建設せねばと思い続けてきました。これが、あまりにも大きな代償を払って得た、ゆずることのできない私たちの信条なのです」。エピローグが流れ劇は終わる。
 会場には惜しみない拍手がいつまでも鳴り響いた。 ずっとハンカチを口に当てたままの人がいる。何度も涙をぬぐう人がいる。会場から一言「とてもすばらしかっ」とかすかに聞こえた。
 出演者は「本番まで出来るかどうか心配だったがうまくできたと思う」「充実感がある、やったという感じ」「けいこ以上の成果が出た。自分の中で何か成長したものがあると思う」それぞれが口ぐちに話した。そして、どの顔も笑顔で満ちあふれ、キラキラ輝いて見えた。
 ここに、みんなの夏の日の忘れられない思い出が一つ増えた。平和であるからー・・・・・。

戦争と平和は共存できない勇気を持って訴えよう

▲「私たちもお国のためにつくします」と手紙を読む小学生ら

▲250人余の市民が詰め掛けた市役所一階ロビー、手作り劇に惜しみない拍手が送られた

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