防災への取り組み

高原自治会の取り組み

自主防災組織結成に向け会議を重ねる高原自治会
▲自主防災組織結成に向け会議を重ねる高原自治会

 高原自治会は「自分たちのまちは自分たちで守る」という考えのもと、大規模な自治体としてはいち早く自主防災組織の結成に取り組み、準備委員会を立ち上げた。同自治会は三千百五十二世帯、八千百二人の区民(十月一日現在)を抱え、区域は海抜の低い地域を多く含む。

 準備委員会は市の防災担当職員や災害時要援護者避難支援事業担当職員を交えた会議の開催や、人材の確保・災害時要援護者の把握・避難場所の情報収集等も活発に行っている。高原自治会自主防災組織は情報班、消火・救出班、救護班、避難誘導班、安全点検班、給食・給水班の六班体制で消防団員や消防署退職者、民生委員などに協力してもらい構成する予定だ。現在、「高原自治会自主防災規約」と「高原自治会自主防災組織防災計画」の策定に向け、会議を重ね内容を検討している。災害時要援護者避難支援事業も市役所と連携して進行中だ。さらに、地域の会社や団体との連携体制も整備しており、災害時の避難場所は自治会長と市の防災担当職員で海抜の高い地域にある候補地を一軒一軒まわり、災害時の使用許可をもらった。一時避難場所も東日本大震災以降見直しており区域にある四階以上の建物の位置も把握している。また、自治会で発行している広報紙「たかはら」に自主防災組織結成に向けた取り組みや経過報告を掲載し、区民に地域ぐるみの協力も呼び掛けている。平安座朝信高原自治会長は「自主防災組織の結成は急務だが、地域に合った防災規約・防災計画をしっかり策定し自主防災組織の体制を整えたい」と話す。

 一方、他の自治会も自主防災組織結成に向け動き出している。今後は高原自治会の取り組みがモデルとなり、市内三十七自治会すべてに自主防災組織が結成される事が期待される。

高原小学校の防災計画

児童玄関に貼られた海抜表示
▲児童玄関に貼られた海抜表示

 高原小学校では県内で初めて「津波災害学校防災計画」を立ち上げた。この計画の中身は、@学校の防災体制(避難誘導班の編成など)、A学校防災委員会の設置(防災計画の改訂見直しなど)、B災害対策本部の設置、C子ども達への防災教育、D避難場所及び避難経路の策定、E一時避難ビル等の把握などとなっている。計画の策定の経緯について高原小学校宮城紀士教頭先生に話を聞いた。

 東日本大震災を受けて、高原小学校は海抜が2・6メートルと低く、今までの校舎の上の階に逃げるという避難計画では津波に対応することができない、高台に逃げなければ。という長田千代子校長の提案があり、教頭と六人の安全主任の先生で避難計画の見直しを行った。夏休みには実際に自分達の足で避難場所を探し歩き、高原の高台にある店舗の駐車場などいくつか避難場所に適した場所を見つける。だが、避難の際には、その土地の持ち主の許可や、交通整理など課題が残るため、警察署と市役所の防災担当に相談し、そこからそれぞれと連携を始め、県内初の「津波災害学校防災計画」の作成が始まった。時期を同じくして、校区内の高原自治会も自主防災組織の結成について動き始めたところであったため、互いに協力していくこととなった。「津波災害学校防災計画」は、市の防災担当、高原小学校、教育委員会の担当が九月より毎週会議を行い、作成した。その中で生徒は津波の危険性がある時には、学年ごとに決められた高台の避難場所へ避難することになった。決められた避難場所は一度保護者に報告したが、今後は学校のホームページに掲載し、また学校内にも貼り出すなど、できるだけ周知できるような体制をとる予定となっている。

防災訓練で机の下に隠れるこども達
▲防災訓練で机の下に隠れるこども達

 この高原小学校の取り組みはモデルケースとして、市内東部地域の小中学校のみならず、県内の低地帯に立地する小中学校の安全対策におおいに参考となるであろう。

室川市営住宅自衛消防訓練

消火器を実際に使用した初期消火訓練の様子
▲消火器を実際に使用した初期消火訓練の様子

 室川市営住宅では十一月六日に、入居者及び関係者的の防火意識の高揚と防火体制の充実強化を図ることを目に自衛消防訓練が実施された。

 訓練は「午前九時に地震が発生し九時一分に防災室の火災受信機が八号棟六〇二号室からの火災警報を受診。同室より炎が天井に立ち上ろうとしているところを発見した」と想定。消防機関への通報や非常放送による避難誘導を行う「通報連絡訓練」、消火器を実際に使った「初期消火訓練」、各棟の入居者及び来客を安全区画に導く「避難誘導訓練」、避難時に残留者・負傷者の有無を確認し、発見した場合は救護所へ搬送する「救護訓練」、「炊き出し訓練」が行われた。訓練には沖縄市消防本部も参加し、放水訓練やはしご車での救助訓練も行われた。

はしご車の救助訓練が行われた六階は、めまいがするような高さ
▲はしご車の救助訓練が行われた六階は、めまいがするような高さ

 初期消火訓練では、火災が発生した場合における初期消火の重要性から、ガソリンを染み込ませた布に火をつけ、消火器で消す実技訓練が行われた。住民たちは消防職員から消火器の使用方法や、うまく火を消すコツを習い実践した。また、消火活動を行う際の避難経路の確保や消火器の消火可能規模なども説明された。

かんたん!防災シンポジウム開催

 健康福祉総務課は、十一月十一日に「かんたん!防災シンポジウム」を開催した。

担架で負傷者を搬送する訓練
▲担架で負傷者を搬送する訓練

 シンポジウムでは初めに加古川グリーンシティ防災会の大西賞典会長を講師に「楽しくなければ防災の輪は広がらない。楽しく防災活動をやろう」というテーマのもと防災の輪を広げるコツについての基調講演が行われた。講演では災害に備え普段から地域活動に参加し助け合う体制を創り上げておくことの重要さ、日常生活の中で防災意識を持つことの大切さについて語られた。また、災害は「非日常的な出来事」のため、対策に身が入らない。防災を生活の延長線上に位置づけ日常的なものにするため、防災の工夫を普段の生活に取り込む「生活防災」についての説明も行われた。「生活防災」の実践については、祭りや地域の清掃等の行事も防災に結びつけること、日常使用している物を平常時と災害時の両方で役立つよう整備すること等があげられた。講演は時折笑いが起こるなどテーマのとおり「楽しく」行われ、参加者達は楽しく防災について学んだ。

 続いて行われたパネリスト達によるシンポジウムでは「まちづくりや防災指導は行政中心と考える人が多いが地域で行ってもよい」、「災害時はパニックになり、事前に決めていたことも分からなくなってしまうため避難場所は普段からよく行く場所にするなど、工夫が必要」、「『防災』という言葉を使うと身構えてしまうため、炊き出しならアウトドアという言葉を使うなど発送の転換が必要」等の意見が述べられた。

楽しい講話で防災の輪を広げる大西会長
▲楽しい講話で防災の輪を広げる大西会長

 健康福祉総務課では十月に災害時要援護者避難支援事業を開始した。同事業は、災害時に一人で避難することが困難な方や、手助けを必要とする方に対し、避難支援や安否確認などを行う事業だ。利用申請すると担当職員が訪問調査し、関係者からの聞き取りや避難経路の設定を行い、個別計画書を作成する。

 災害はいつ起るか分からない。不意に我々を襲い甚大な被害をもたらす。十一月十八日、市は県に津波時における一時避難施設として県営泡瀬団地、県営比屋根団地、県営浜原第二団地の使用に関する協定書を提出した。行政と住民、行政同士、住民同士がお互い協力し合い、防災体制を整える事で災害時の被害は最小限に抑えられるのではないだろうか。行政と住民が一体となってまちの防災に取り組むことが重要だ。