更新日:2024年4月26日
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奇妙な星形の繭を作る新種のハチが、大阪市立自然史博物館、神戸大学、沖縄市立郷土博物館、九州大学の共同研究により、沖縄島・奄美大島から報告されました。
奇妙な星形の繭を作る、新種のハチが沖縄島・奄美大島から見つかりました。大阪市立自然史博物館外来研究員の藤江隼平氏を中心とした、神戸大学、沖縄市立郷土博物館、九州大学の研究チームが、令和3年10月29日、国際専門誌Journal of Hymenoptera Researchに発表し、ホシガタハラボソコマユバチ(学名:Meteorus stellatus「stellaは星の意。」)と命名しました。
発見地の一つは本市の沖縄こどもの国で、こどもの国と博物館が共同で実施している、こどもの国周辺の動植物を調査する「沖縄こどもの国いきもの調査隊」市民ボランティアの活動が本種の生態解明の大きな助けとなりました。郷土博物館は幼虫が繭になる様子を撮影・記録し、不思議な星型の繭塊がどのように作られていくのか解明することに貢献しました。
ホシガタハラボソコマユバチは体長3-4mmほどの小さなハチです。メスはスズメガ類の大きな幼虫に多数の卵を産み付け寄生します。ハチ幼虫はスズメガ幼虫の体内で育ち、成熟するとスズメガの体を脱出します。糸を吐いて枝葉からぶら下がると、やがて協働して大きな星型の集合繭を作ります。100個を超えることもある個々の繭は全て外向きに放射状に整列しており、それを吊り下げるケーブルの長さは1mにも達します。
寄生バチは他の昆虫やクモなどに寄生し体内を食べる昆虫です。宿主の体内にいるときは比較的安全に過ごすことができますが、幼虫や蛹は成虫になるために宿主から脱出する必要があり、そのままでは天敵に簡単に食べられてしまいます。アリや二次寄生バチ(寄生バチに寄生する寄生バチ)から身を守るため、どのような繭を作るのかが重要です。
ホシガタハラボソコマユバチは『繭を吊るす』ということと、『集合繭にすることでひとつひとつの繭が露出する面積を最小化する』という2つのことによって、天敵から攻撃を受けにくくしていると考えられます。
沖縄をはじめ、南西諸島の豊かな自然のなかには、まだまだこのような発見が眠っています。私たちの身近な環境にも、不思議な生態をもつまだ知られていない昆虫が潜んでいるかもしれません。私たちの身の回りに残された自然の価値を再考するきっかけになったと思います。
(沖縄市立郷土博物館 刀禰浩一)
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