市民の暮らしを守るために、

自治のまちを、市民とともに築いていく

市民一人ひとりが安心して暮らせる

ひと輝く、元気な沖縄市へ

 今日の社会状況を見ますと、かつてない世界的な金融危機にあって、日本経済もまた一段と深刻さを増しています。日本の国を支え、地域を支えてきた働く人々の環境や生活は、これまでにない厳しさを余儀なくされ、改めてこの国のあり方が問われています。それだけに、企業の社会的責任をはじめ、国民の暮らしを守る政治の責任は極めて大きく、地方自治体においても、市民に一番身近な政府としての役割を果たさなければなりません。このような時代のうねりのなかで、市政にとって最も大切なことは、市民の「いのち」と「くらし」を守り、豊かな未来像を市民一人ひとりが描くことのできる政策 の実現であり、平成二十一年度においても、市民の英知が、ピンチをチャンスに変えるという信念をもって、諸施策を推進してまいります。

 平成二十一年度の市の予算は「ひと輝く、げんきな沖縄市」を推進するために総額七百四十八億三千百三十万円となっています。二月二十四日、市議会二月定例会が開かれ、東門市長より平成二十一年度の施政方針が発表されました。今月号は、そのあらましを紹介します。


東門市長・施政方針(要旨)
  第三百二十八回沖縄市議会定例会にあたり、平成二十一年度の市政運営に対する所信を申し上げ、議員の皆さま並びに市民の皆さまのご理解とご協力を賜りたいと存じます。

 市長就任後、早三年が経過いたしました。この間、市民の皆さまのお力添えを賜りながら、安心・安全に暮らし、働くことのできるまちづくりに全力を尽くしてまいりました。
 三年間の市政運営の中で、私が強く感じますことは、このまちに対する市民の皆さまの熱い思いです。
 自分たちのまちを自らの力で良くしていくという懸命さが、実際の形となってまいりました。「商店街に元気を取り戻そうとする力」、「こどもたちの成長を支えようとする力」、「沖縄市の将来のまちのあり方に知恵を出そうとする力」、さらには、地域のいろいろな活動など、市民の力が新しい沖縄市を予感させ、それが今、実感へと変わってきています。
 沖縄市制三十五年を迎え、その歴史を振り返りますと、戦後の大変厳しい時代に、先人たちは常に未来に希望を託しながら、持ち前の明るさと行動力で難局を乗り越え、今日の繁栄を築きあげてきました。
 その伝統は、今に受け継がれ、困難にあっても、互いの知恵と連帯によって新しいまちをつくる確かな手ごたえを私たちに与えてくれます。
 そのような市民に支えられ、私は、「まちはひと」という基本的な姿勢に、誇りと自信を持って更なる一歩を踏み出していかなければならないとの思いを強くしているところです。
 今日の社会状況を見ますと、かつてない世界的な金融危機にあって、日本経済もまた一段と深刻さが増しています。企業の減収・減益が拡大するなか、特に、製造業を中心に非正規労働者の解雇や派遣切りが相次ぎ、正規労働者においても失職などの雇用情勢の悪化が懸念されております。
 正規、非正規を問わず、日本の国を支え、地域を支えてきた働く人々の環境や生活は、これまでにない厳しさを余儀なくされ、改めてこの国のあり方が問われています。それだけに、企業の社会的責任をはじめ、国民の暮らしを守る政治の責任は極めて大きく、地方自治体においても、市民に一番身近な政府としての役割を果たさなければなりません。
 このような情勢にあって、緊急的な手立てをはじめ、雇用制度のあり方や生活のセーフティネットの構築など、生活優先の政策を力強くすすめることが今最も必要なことだと考えます。
そして、これまで国がすすめてきた構造改革が国民の「痛み」と「格差」を広げる要因になったとも言われ、これからの新しい社会を創るための具体的な取り組みをすすめなければならない時期にきています。
 また、沖縄県におきましては、全国一高い失業率の影響を受け、さらに雇用状況の悪化が懸念されますが、雇用問題は県と市町村が一体となった対策を緊急に講ずることが必要であり、国の生活対策や緊急雇用対策とも連動した迅速な対応に、全力を尽くさなければなりません。
 さらに、本土との格差是正から沖縄の特性を活かし、自立的発展をめざして策定された沖縄振興計画も平成二十三年度には終了することから、沖縄の将来に向けた新たなビジョンを県民自ら示すことが求められています。すでに、沖縄県では「沖縄二十一世紀ビジョン」づくりへの取り組みがはじまっていますが、少子高齢化や人口減少社会、地球環境の問題や地方分権の推進等への対応はもとより、依然として変わらない米軍基地の過重な負担など、沖縄の現状をしっかりと見すえ、子や孫の世代に悔いを残さないために、精一杯の努力を重ねることが、今を生きる私たちの責務だと考えます。
 このような時代のうねりのなかで、平成二十一年度がスタートしますが、市政にとって最も大切なことは、市民の「いのち」と「くらし」を守り、豊かな未来像を市民一人ひとりが描くことのできる政策の実現であり、しかも、それは市民自ら創る自治への自負に裏打ちされるものでなければならないと考えます。  私は、市長就任以来、市民が互いに信頼し、支えあうなかで、元気あふれる沖縄市が実現することを確信し、市民の声が地域を創る市民主権を市政運営の基本としてまいりました。
 沖縄市のまちづくりビジョンとして「ひと輝く げんきな沖縄市」の実現に向け、「くらしの安心」や「こどもの育成」、「まちの活性化と文化・産業の振興」、「市民との協働」を基調とする十本の基本政策を掲げ、市政運営に取り組んできましたが、これらの政策の原点はまさに「ひと」であり、このまちをこよなく愛する市民の情熱とエネルギーこそ、市政の力と信じて邁進してきたところです。
 平成二十一年度においても、厳しい現実を受け止め、市民の英知が、ピンチをチャンスに変えるという信念をもって、諸施策を推進してまいります。

まず、はじめに「くらしの安心」です。
 今日の急激な経済活動の緊縮は、失業率が高く、本土企業にも職を求めてきた沖縄の雇用状況から、本市の市民生活も多大な影響を受けるものと危機感を募らせております。
 今後、解雇された労働者や県内景気の後退により、就職が一層厳しくなる若年層等の雇用につきましては、国や県の雇用および経済対策と連動するなど、沖縄市緊急雇用対策推進本部を中心に、迅速かつ効果的な対策を講じ、雇用に対する市民の不安軽減に全力で取り組んでまいります。
 国民皆保険制度を担う国民健康保険事業につきましては、国保制度の構造的な問題はあるものの、市民生活のセーフティネットの一端を担う地方自治体として、低所得者層への支援策を講じつつ、保険料の収納率向上や医療費の適正化などへ計画的に取り組んでまいります。

次に、「こどもの育成」です。
 本年度は、「驚きと発見」をキーワードに、ワンダーミュージアムなどで沖縄市こども科学力向上事業を展開し、こどもたちが、科学する心を育み、学ぶことの楽しさを体験できるような取り組みをすすめます。また、来園者にやさしい、より充実した施設整備をすすめ、県内外から、人々が集い、にぎわい、地域の活性化を担う貴重な地域資源となるよう努めてまいります。

次に、「まちの活性化と文化・産業の振興」です。
 中心市街地のにぎわいと戦後沖縄を象徴する歴史など、個性を際立たせる軸の形成に向け、胡屋十字路とコザ十字路間を結ぶ国道三三〇号拡幅計画への取り組みとあわせ、中心市街地と臨海部を結ぶ魅力的な県道二〇号線沿線の景観を創出するなど、沖縄市らしい主要幹線の形成により、まちの活性化をすすめてまいります。
 一方、地域経済を支える第一次産業の振興に取り組むなか、特に、生産者の顔の見える地産地消が求められる今日、農産物の生産にとどまらず、観光や学習、健康、加工製造など、持続可能な農業と農地の持つ多面的な機能の創出が重要となります。農業や経済、観光分野の方々などの参画のもとに策定された沖縄市新アグリビジネス計画にもとづき、農業の基盤整備をはじめ、「食」と「農」をつなぐ中部ファーマーズマーケット「ちゃんぷるー市場」との連携など、計画的な施策展開を図っていきます。
 東部海浜開発事業につきましては、公募委員等による東部海浜開発事業検討会議や各種団体等からのご意見を真摯に受け止め、多くの皆さまのご協力のもとに、熟慮を重ね当該事業の方針をお示ししたところです。
 今後は、その方針にもとづき、できるだけ早い時期に、市民参画により土地利用計画を見直し、本市の活性化と将来の発展に向け、取り組みをすすめてまいります。

次に、「市民との協働」です。
 公募委員等で構成される沖縄市活性化一〇〇人委員会は、市民がこれまで培ってきた知恵や経験、感性を活かす場となり、市民の思いや力を反映する仕組みとして定着し、市民と行政の協働が実践されるのを目の当たりにした時、まさに、「人こそ財産、人こそ力、人こそ希望」との意を強くしております。
 これまでも、沖縄市の面白さ、まちの魅力が語られてきました。これからは、このまちに自らを重ねあわせ、市民の方々が心やすまる空間、楽しく・元気になる空間など、まさに、まちと共感し、まちと語る、そのような関係を創っていくことが大切だと思っております。

それでは、平成二十一年度予算について申しあげます。
 地方自治体においては、まず生活者の立場に立ち、雇用をはじめとする市民の暮らしを守っていくことを最優先に、国の雇用や再就職支援、生活保障のための対策、沖縄県緊急総合経済対策などと連動し、市民と一緒になって、この難局に立ち向かっていかなければならないと考えています。
 平成二十一年度は、非常に厳しい行財政運営を余儀なくされるものと予測されますが、地域活性化に資する事業の積極的な展開など、できるかぎり事業の選択と集中による予算の計上をしていきたいと考えています。
 予算額につきましては、

一般会計 
四百三十三億二千九百万円
特別会計   
二百七十八億六百九十七万円
企業会計
三十六億九千五百三十四万五千円
合  計
七百四十八億三千百三十一万五千円

 となっています。
 以上、平成二十一年度の市政運営にあたって、私の所信の一端を申し述べましたが、次に主要な施策の概要についてご説明申し上げます。

尊重しあい平和の心を大切にするまち
 平和行政の推進については、八月一日から九月七日「市民平和の日」までの平和月間において、市内各中学校の生徒等を平和大使として長崎市へ派遣し、平和学習や交流を深めるとともに、大使たちによる報告展をおこないます。また、戦跡めぐりや平和講座を開催し、市民の平和意識の高揚を図ります。
 児童虐待の防止については、児童虐待防止ネットワーク推進協議会を中心とした関係機関との連携による問題解決に取り組むとともに、訪問支援員を派遣し、家事・育児の支援や相談・指導により問題の発生予防および早期発見に努めます。

自由・闊達な市民性とチャンプルー文化を発信するまち
 次代を担うこどもたちが、世界の優れた舞台芸術にふれ、豊かな感性と人間性を育てる場づくりをすすめるため、2009国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ(キジムナーフェスタ)を開催します。今年度は、乳幼児のための舞台作品「小さな観客のための演劇祭」など、多彩な芸術作品との出会いをとおして市民の文化意識の高揚を図ります。

世界にはばたく心豊かな人を育むまち
 児童生徒の自ら学ぶ意欲を育て、学習習慣の定着や基礎学力向上を図るため、学力向上対策推進事業を実施するとともに、新たに科学技術の体験や実験等をおこなう沖縄市こども科学力向上事業に取り組みます。
 また、全国高等学校総合体育大会「美ら島沖縄総体2010」の成功に向けて、組織体制を充実します。
 図書館については、市民の読書活動を支援するため、図書資料の整備をはじめ移動図書館による巡回サービスをおこなうとともに、新たな図書館づくりに向け取り組みます。
 博物館においては、地域文化に対する意識高揚を図ることを目的として、常設展や企画展を開催するとともに、越来グスクおよびその周辺文化財の標柱や案内マップを設置します。

楽しく・支えあい安心して生活できるまち
 地域福祉や男女共同参画社会を推進する拠点施設となる(仮称)社会福祉センター・男女共同参画センターおよび母子家庭等の保護と自立を促進する母子生活支援施設(レインボーハイツ)の建設工事をおこないます。
 0歳児保育の拡充や入所児童の健康状態の変化に適切な対応ができるよう、新たに、私立認可保育所の看護師配置等への支援をおこないます。認可外保育施設入所児童に対しては、援護費の拡充および健康診断等を実施します。
 高齢者の福祉については、第三次沖縄市高齢者がんじゅう計画を推進し、高齢者の生きがいと健康づくりの場を提供するとともに、住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう、地域密着型介護サービスの充実を図ります。また、要介護等になるおそれのある特定高齢者などの状況把握に努め、栄養改善や口腔・運動機能に関する教室の開催および個別指導等の支援の充実を図ります。

国際的な情報通信拠点を形成するまち
 沖縄市テレワークセンター、沖縄市ITワークプラザおよび沖縄市モバイルワークプラザの三施設を拠点とした、情報通信関連産業の集積と雇用の拡大に向け、企業誘致の展開や雇用創出の支援等をおこないます。
 インターネットを利用した市民サービスについては、台風や大雨などの防災情報や地域の安全情報等を配信するとともに、生涯学習講座やイベントの情報を提供します。

力みなぎる産業のリンクを興すまち
 国や県による雇用・経済対策と連動した施策を展開するなか、国の緊急保証制度や沖縄市小口資金融資制度の活用を促進し、市内中小企業の経営安定化を図ります。
 タウンマネージャーを配置し、中心市街地の活性化を促進するとともに、商人塾・創業塾などを開催し、商店街の意識啓発と創業者の育成に努めます。
 畜産業の振興については、素牛(もとうし)購入や子牛の生産を支援し、安心・安全な畜産物の安定供給とブランド化に努めます。
 水産業の振興については、漁船や魚群探知機などの近代的設備の導入、イカ産卵床などの設置、氷や漁具等の購入を支援するとともに、沖縄市泡瀬パヤオ交流広場における港まつり開催を支援します。

環境と調和する国際都市を創るまち
 本市の主要幹線道路である国道三三〇号については、胡屋十字路からコザ十字路間の拡幅整備を促進するため、沿線地域の土地利用計画を策定するとともに、国・県によるコザ十字路の交差点改良事業の早期完了を促進します。
 幹線道路の整備については、室川線、安慶田中線および諸見里桃原線の整備を実施するとともに、本市の中心市街地と臨海部を結ぶ県道二十号線の拡幅整備を促進します。
 東部海浜開発事業については、国・県と連携を図りながら、市民参画のもと土地利用計画の早期見直しに取り組むとともに、泡瀬地区の環境利用学習等を実施します。
 循環型社会の構築については、資源ごみ収集事業等をおこなうとともに、生ごみ処理容器の設置補助を実施するなど、市民のごみ減量に対する意識高揚に努めます。
 倉浜衛生施設組合の新炉建設については、構成市町と連携のもと、ごみ処理施設、ごみ搬入道路等の整備完了を促進します。
 以上、平成二十一年度の主要な施策の概要を申し上げました。


 この施政方針は、私が市長に就任してから四度目の施政方針となります。
 就任した当時を思い起こすと、三位一体改革の名のもとに地方交付税や国庫補助負担金の縮減等がすすめられ、地方への負担が強いられておりました。
 それが今では、深刻な経済不況による緊急雇用対策や生活を守るための緊急対策等の財政措置が講じられる状況にあり、国の経済・財政政策も大きな転換期にあるものと認識しております。
 一方、地方自治体におきましては、個性豊かな地域づくりを推進するために、地方の自主性と自立を柱とした地方分権に取り組まなければなりません。
 地方分権の推進にともない、国や県の事務が本格的に市町村へ移譲されるなか、職員の定数は年々削減されるなど、地方自治体をとりまく環境は、一段と厳しさを増す状況にあります。
 国・県からの権限移譲を見すえ、第三次沖縄市行政改革大綱等の推進により、逼迫する国保会計を含む財政運営の健全化に努めるとともに、行政評価システムを引き続き実施し、事務事業の改善に取り組んでまいります。
 さらに、行政運営の効率化に資するために、公共下水道事業の企業会計化に向け、下水道施設の資産台帳整備およびデータベース化に取り組んでまいります。
 また、職員の持てる能力や可能性を引き出し、組織の活性化および総合力の向上を図るために、沖縄市人材育成基本方針にもとづく職員研修等を実施し、「職員力」を高め、質の高い市民サービスの提供に努めてまいります。
 私は、これまで「市民の暮らしを守るために、自治のまちを、市民とともに築いていく」ということを信条に、市政を運営してまいりました。
 いまや市民の暮らしをとりまく環境は、複雑かつ多様化し、あらゆる分野において、市民との協働によるまちづくりが、地域課題を解決する大きな基軸となっております。
 「市民力」とも言うべき市民の多様な知恵と力を市政に結集する沖縄市活性化一〇〇人委員会においては、これまで中心市街地の活性化をはじめ、公立保育所の役割やこどものまち宣言など、本市のまちづくりや方向性について協働をすすめてまいりました。
 各部会から思いのこもった意見が報告されてきましたが、部会に携わった方々が、その後も積極的にまちづくりに取り組んでいる姿に触れるたび、その情熱と行動力に行政も積極的に応えなければならないという思いを強くしております。
 また、平成二十三年度からスタートする第四次沖縄市総合計画の策定に向け、新たな時代に対応するまちづくりの指針として、市民参画による本市の将来像を描いてまいります。
 今年は沖縄市が誕生して三十五周年を迎えます。市民とともに歩んできた三年間は、本市の歴史の一幕にすぎませんが、協働によるまちづくりへの取り組みが、市民主権を基調とする市政発展の礎になることを期待し、今年度も力強く歩んでまいります。
 これまで述べてまいりました施策を着実に推進し、私は「ひと輝く げんきな沖縄市」をモットーに、十本の基本政策の実現に全力を尽くしてまいります。


 議員の皆さまをはじめ、市民の皆さまのなお一層のご理解とご協力をお願い申し上げまして、私の施政方針といたします。

平成二十一年二月二十四日
  沖縄市長 東門 美津子