今月の人

多くの人と交流し笑顔を広げたい

271 荻堂 裕美(ひろみ) さん (52)

 今月は、福祉の母「島マス」をモデルにした沖縄市市民ミュージカル『コザ物語』で、主人公の島元マサのもとで、家族を失ったこどもや女性たちの身の回りの世話や手助けをしている、元気で明るい比嘉ウメを演じている荻堂裕美さんを紹介する。今月は、荻堂さんにコザ物語や出演しているこども達への思いを聞いた。

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 荻堂さんは、結婚後子育てをしながら地元の自治会で子ども会を立ち上げたり、育児サークルの代表も務めていた。平成20年から六年間は、市の教育委員会で社会教育指導員として、思春期講座や地域リーダー養成講座などを担当し、こども達の健全育成教育に携わってきた。
 荻堂さんが沖縄市市民ミュージカル「コザ物語」に出演したのは、「島マス記念塾」の卒塾生だったからだ。沖縄の福祉の母「島マス」は、終戦後、米軍支配下の基地のまちで「チムグリサンの心」で女性やこども達の社会的な自立を支援し、周りの協力のもと胡差(コザ)児童保護所やコザ女子ホームを設立した。島マス記念塾はそんな島マスの精神を受け継ぎ、地域へ貢献する人を育てることを目的に沖縄市社会福祉協議会が設置し、これまで21期生、約380人が卒塾している。荻堂さんはその6期生で同期には、うちな〜噺家(はなしか)の藤木勇人(志ぃさー)さんらがいた。その当時は専業主婦で子育てに追われる毎日だったため、月2回の島マス塾の活動日が楽しく、他のメンバーから多くの刺激を受け、自分の意見を表現できるようになり、荻堂さんにとって良い転機になったそうだ。
 平成23年、島マスの生誕100周年を記念して沖縄市市民ミュージカル「コザ物語」が誕生した。出演者はすべてボランティアで、子役のこども達は市内の小中学校から募集した。これまでの4年間で14回公演を行い、今年の8月には兄弟都市の大阪府豊中市でも公演を行った。公演前は知らない土地で演じることに不安があったが、公演当日は立ち見が出るほど観客が入り大盛況だったそうだ。特に大阪にいる沖縄出身者が懐かしいコザの風景に喜び、終演後のアンケートでも「懐かしくて涙が出た」との声があり、こんなに多くの方に観て頂き感動してもらえたことが嬉しくて心からやってよかったと思ったそうだ。
 荻堂さんはコザ物語について「沖縄市のこども達の元気やパワーを観て欲しいし、この劇でこども達が学んだことを他の友達にも感じてもらい、次はぜひ参加して欲しい。ひとつのことを皆でやり遂げる達成感を感じるいい機会になり、こどもだけではなく、大人もこども達から元気をもらえる」と語った。
 普段は、絵本の読み聞かせサークルやスポーツ推進委員としても活動している荻堂さん。持ち前の明るさでこれからも周囲の人を笑顔にしていく。

戦後文化シアター 今月のヒストリート

 先月に引き続き「ヒストリートU」では、企画展「戦世(イクサユー)の子どもたち〜コザ収容所の孤児院〜」を開催中です。
 激しい戦闘の中、肉親と離れ離れになった子どもたちは戦場で保護され、その多くがコザ孤児院に収容されました。砲弾が飛び交う戦場から生還し恐怖から解放され、束の間の安息を味わう子どもたち。残された写真には孤児院の広場で鬼ごっこをしたり騎馬戦をしたりして遊んでいる風景が写しだされ、どこか楽しそうな様子が見受けられます。しかし、一方で栄養失調により痩せ細り虚(うつ)ろな目をした子どもたちの写真も残されています。また、ある証言によれば、前日まで一緒に遊んでいたのに朝起きると亡くなっている子もいたとあるように、病気やケガで亡くなっていく子どもたちも少なくなかったようです。
 戦場で肉親を失い、収容された孤児院でも多くの「なかま」を失った子どもたち。しかし、それでも逞(たくま)しく戦後を生き抜いてきた方の話は実に考えさせられます。
 今回の展示を通して今一度平和について考えてみませんか。

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遊戯をする子ども(資料:沖縄県公文書館)

  • ■市史編集担当/TEL:929-4128(直通)
  • ■ヒストリート、ヒストリートU/TEL:929-2922

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