今月の人

昔ながらのモノづくりを次代に伝える

270 金城 睦明(ぼくめい) さん (95)

 今月は、いろいろなモノ作りをしている金城睦明さんを紹介する。金城さんが藁(わら)を材料に制作するホウキや運搬道具、馬の鞍の下に敷くシタンダ(クッションのようなもの)などは実際に作ることができる人が数少なく、貴重な存在だ。今月は金城さんに、モノ作りについて話を聞いた。

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 藁を編んで作られた縄やホウキ、ワラジなどは、昔はどの家にもあり、誰もがあたり前のように作り使っていたのだが、今では博物館や文献の中でしか見ることのないものになっている。金城さんは、そんな昔ながらの手作りのモノを実際に作ることができる貴重な存在だ。
 金城さんが生まれたのは、沖縄県島尻郡久米島町。大人になってから沖縄市に移り住み銀天街の中で靴屋を経営していた。引退後は自分の畑で野菜作りを始め、その後、16、7年前からモノ作りを始めた。小学校時代に藁ボウキを作ったことがあったので当時の事を思い出しながら作り始めた。材料の藁は、実は「編む」のではなく、「ぬう」と表現され、繊維を指でねじってひも状にしていく。そしてぬった藁をホウキやワラジの形にしていく。作るのに慣れてくると、昔父親や兄達が作っていた様々な物を思い出し作り始めた。『ガンシナ』というドーナツ型のクッションは、昔荷物を頭上運搬する時に頭と荷物の間に挟んで使用したもので、『シタンダ』は馬の鞍の下に敷いて荷物運搬の際に馬の負担を軽減させる役割をするものだ。昔はそういう日用品も全て藁を材料に作っていたのだそうだ。
 金城さんの作品は、沖縄市立郷土博物館とうるま市立海の文化資料館、沖縄こどもの国で、展示・活用されている。市の郷土博物館の職員は、今まで資料としてしか見たことがなかったモノの作り方・使い方を実際に金城さんから学ぶことができ、とても助かっていると話す。おかげで、金城さんがこどもの国や博物館に行くと、いつも若い人たちが「教えて」と集まってくるそうだ。博物館やこどもの国では、縄の「ぬい方」を撮影させてもらったり、馬に荷物を載せる方法を教わったり、藁ボウキ作りの講座を開講したりして、次代にまで受け継いで行こうとしている。
 金城さんの手はとても指が太くて力強く、すぐに『モノ作りの手』だと分かる人には分かるらしい。そんな金城さんは「モノ作りは自分の趣味でやっている。何もないと淋しいからいろいろなモノを作るんだよ」と話す。様々なモノを作っては、博物館に寄贈したり、人にプレゼントしたりしている金城さん、これからも元気でたくさんのモノを作り続けて欲しい。

戦後文化シアター 今月のヒストリート

 「鉄の暴風」と形容されたあの沖縄戦から、はや70年が経とうとしている。今回「ヒストリートU」では、企画展「戦世の子どもたち〜コザ収容所の孤児院〜」を開催しています。
 1945(昭和20)年4月、沖縄市嘉間良に民間人収容所・コザキャンプが建設され、収容所内に孤児院の設置が決定されるのは5月だった。焼け残った瓦葺きの民家を利用したコザ孤児院には、戦場で親や肉親を失った子どもたちが収容され、7月にはその人数が600名を越えていたとの資料もある。孤児たちは、その間、親戚や知人に引き取られたり、まったくの他人に引き取られ苦労を重ねた人もいたようです。45年8月の新聞には、孤児の将来を考えた養親探しへの協力記事が掲載されている。一方、正確な数字はわからないが、院内では大勢の子どもたちが亡くなっています。
 県内13か所に開設された孤児院で最初にオープンし、最大の収容人数を要したコザ孤児院は、1949年11月に沖縄厚生園に統合されるまで存在している。
 企画展は、これまでの調査成果や新資料・情報を通して多くの方々に見ていただき、あらためて戦争・平和とは何かを考える機会になればと思います。また、孤児院に関する情報もぜひお寄せ下さい。

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聞き取りを基に作成したコザ孤児院周辺と遊び場スケッチ

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  • ■ヒストリート、ヒストリートU/TEL:929-2922

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