今月の人

知花花織の素晴らしさをもっと伝えたい

265 新門 伊咲美(しんもん いさみ) さん (31)

 沖縄市の誇る伝統工芸品「知花花織」。素朴ながら華麗なその織物は、昔から地域に愛され続けてきた。国の伝統的工芸品としての指定を受け、これまで以上に注目が集まっている。今月は、知花花織事業協同組合で織り手として在籍し、数々のコンクールで入賞している新門伊咲美さんに、知花花織への思いや今後の目標について話を聞いた。

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 新門さんは、那覇工業高校の服飾デザイン科を卒業し服飾関係で働いていたが、地元で働きたいとの思いから情報を集めていたところ、知花花織という伝統工芸品があることに興味を持ち、第11期知花花織基礎研修を受講した。研修当初は、糸を染色することから始まる一連の作業を一人でやり通せるのか不安だったが、指導員や先輩に教わりながら、作業や機織(はたおり)を進めていくうちに、自分がイメージしたデザインが「形」になっていく楽しさを知り、制作を重ねていったという。反物を制作するようになると、着る人の気持ちがわかるようにと着物の着付け教室にも通った。
 新門さんを夢中にさせた「知花花織」は、18世紀頃から知花や登川地域で織られ、祭事や芝居の時の晴れ着として愛され続けており、平成24年7月には国の伝統的工芸品としての指定を受け、これまで以上に注目が集まっている。
 新門さんは、自身の織った作品を数々のコンクールに応募しており、沖縄県工芸公募展や、九州・山口・沖縄の新たな伝統工芸を紹介する西武伝統工芸展でも2年連続で入賞している。入賞することで、大勢の人に知花花織を知ってもらえる機会ができることと、織る作業は全て一人で行う工程のため、自分の作品を評価してもらういい機会になるという。また、周りの人や地域の人が喜んでくれることも、嬉しく励みになると話す。
 ひとつひとつの工程は地道な作業だが、デザインや色の合わせ方はもとより、染色や織り方などで微妙な違いが出て完全に同じものは作れず、そこが手作りの良さであり、新しい発見もでき、やりがいに繋がっているという。
 国の指定を受けたことで、県外でも展示会が行われ知名度も上がり、織り手の制作意欲も上がってきた。また、販売する環境も整ってきており、先輩たちが努力し、これまで築いてきたおかげで、今の恵まれた環境で制作できていると感じているそうだ。
 新門さんは、「今後も色々なコンクールに出品して、知花花織という素晴らしい伝統工芸品が沖縄市にあることをもっと多くの人に知ってもらいたい。また、伝統工芸品を通して自分の住んでいる地域に目を向け愛着が生まれるきっかけになれば嬉しい」と語った。

戦後文化シアター 今月のヒストリート

 写真の印鑑は、コザ市と美里村で使われていた公印です。現在印鑑は私たちの生活に身近な存在ですが、その歴史は古く、古代オリエントに起源があると考えられています。日本へは中国を経て伝わったといわれており、九州で発見された金印は有名ですね。
 印鑑の中でも、役所や企業、団体などが使用する印鑑は公印と呼ばれ、私たちが日常使用する私印とは異なります。重要な決め事なども、書類に印鑑を押して初めて効果を発揮します。その点では、公印はその団体の歴史の重要な出来事に関ってきたといえます。両市村の公印は、それぞれの街を間接的に形作ってきた歴史の証人といえるのではないでしょうか。この2つの公印は、1973(昭和48)年12月27日、「コザ市・美里村合併に関する協定書」にも押印され、翌年4月1日の沖縄市誕生とともにその役目を終えました。
 現在ヒストリートUでは、沖縄市の40年間を諸資料で紹介する『沖縄市40年の横スケッチ顔PART2』を開催しています。節目の年に、沖縄市の歴史を考える機会としてぜひ足をお運びください。

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「沖縄県中頭郡美里村長之印」と「コザ市長之印」の公印

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