特集

子どもを非行から守るために

学校が夏休みに入る七、八月は長期の休みで子どもたちにとっては学校から解放され自主活動など、伸び伸びと創造的な活動の出来る好機でもあるが、解放感から予期せぬことや、ちょっとした弾みで非行に走ってしまう危険な時期でもある。今月号では、青少年センターの来所相談の資料を紹介しながら、青少年を非行から防ぐにはどうしたらいいのかを考える。

子どもの変化に気づいていますか?

子どもの変化に気づいていますか?

青少年センターは、青少年の健全な育成を図り、併せて青少年の非行防止のため、家庭、学校、警察、事業所関係機関・団体及び地域社会との有機的連携によって、青少年に対する各種教室等の開設や総合的な相談、指導活動等の諸活動を行うとともに青少年の生涯学習の場として、体験学習などを通して社会性豊かな青少年の健全育成を図っている。

ここでは主に青少年相談の現状等を紹介する。

青少年相談は相談者から依頼があった場合、初回面接をもとにケース会議で、今後の方針を話し合い、適切な機関と連携をとり、相談員の継続的な関わりを通して悩みを一緒に考えていく。

○来所相談
平成二十三年度に受理された、来所件数は四八六件で、前年度(五八九件)に比べ、一〇三件の減となっている。

来所相談内容は学校生活についての相談(不登校含む)が最も多く、全体の五一、〇%となっており、その中でも不登校、学習に関する相談が大半を占めている。前年度と比較すると一一八件の減である。また、非行・問題行動に関する相談件数は五九件で、前年度に比べると一四件の減である。

相談者の内訳は、本人による相談が三七〇件で全体の七六、一%にあたる。母親からの相談が六五件で相談者の一三、四%となっている。次に学校からが一八件、親類が一三件、他機関八件、父親七件の順となっている。

来所相談を男女別に見てみると男子についての相談が三三一件で、来所相談数の六八、一%である。また、女子についての相談は一五五件で、三一、九%となっている。

相談対象者の学識別では、中学生が最も多く、三六八件で全体の七五、七%を占め、前年度に比べると三一件の減となっている。次いで小学生七八件、高校生の二件の順である。

向き合っていますか子どもの心とー非行のサインを見逃すな

向き合っていますか子どもの心とー非行のサインを見逃すな

相談処理状況は継続指導が二八〇件、指導助言一九一件、学校調整が三件、他機関調整・紹介が一二件となっている。

何の問題もなかったように見えた子どもが突然、凶悪、粗暴な非行に走る、そんな事件がテレビのニュースから流れてくる。他人事のように、画面を見て「犯罪者の気持ちが分からない」という。身近で起こる現実のものとはなかなか受け止められない。しかし、現実には、こうした犯罪にかかわる前兆かもしれない少年の夜間街頭指導件数は前年度に比べ二八八件も大幅に増加している。少子化の影響で、子どもたち全体の数が減ってきているにもかかわらずだ。ひと昔前なら、非行に走りそうな子どもは、ふだんの態度や行動、服装などにその兆候が現れており、ある程度分かりやすかったと言えるが、しかし、今は一見、何の問題もないように見える子どもが、突然、重大な非行に走るというケースも少なくない。

ただ、大人にとっては「突然」に見えても、たいていの場合、子どもは、それ以前から問題を抱えていると考えたい。その兆候は飲酒や喫煙などの問題行動や、表情・態度などに現れるが、周囲の大人が気づかないのが現状だ。

最近は、自分の部屋にこもったり、カラオケボックスやゲームセンターなどで遊んだりする子どもも多く、子どもの姿は以前よりも周囲の大人から見えにくいものになっているのかも知れない。

そういうなかで、子どもの微妙な変化に気づいてあげるためには、大人がもっと子どもに近づいていって、子どもを見つめる、そんな努力が必要な気がする。

こんなサインを見逃すな

子どもが問題や悩みを抱えているときは、まず、表情や体調、ふだんの生活態度にも現れる。子どもの微妙な変化を見逃さないようにしよう。

表情や生活態度に現れるサイン

・登校時間になると体の不調を訴える
・衣服が汚れていたり、ケガをしていたりする
・学校に行きたがらない、学校を早退してくる
・うそをついたり、ごまかしたりする
・成績が急に落ちる
・生活が不規則になる
・家族との対話をさける
・感情の起伏が激しい
・ペットなどをいじめる
・部屋に閉じこもる
・言葉が悪くなる

行動に現れるサイン

・酒やビールを飲む
・たばこを吸う
・学校をさぼる
・夜遅くまで街の中で遊ぶ
・親に断らずに外泊する
・見慣れない物、高価な物を持つようになった
・親の財布からこっそり、お金を持ちだしている
・髪形や服装が派手になる

子どもたちの非行等問題行動の防止は、家庭や学校だけでなく、地域や社会全体が取り組まなければならない問題である。特に夏休みに入るこの時期は両親がしっかり子どもの心と向き合うことが大切になってくる。また、親をはじめ、周囲の大人たちに求められているのは、日頃から子どもの心にきちんと向き合い、子どもの声に耳を傾ける姿勢ではないだろうか。

「むつかしい年頃だから好きにさせておこう、そっとしておこう」といった安易な理解をせず、表情、言葉、健康状態、生活サイクル、交友関係など、あらゆる側面のさまざまな兆候から子どもの変化を受け止めることが最も大切ではないだろうか。