今月の人

沖縄の在来種の保存に尽力

242. 高田 勝(たかだ まさる)さん(52)

桑江 喜代子(くわえ きよこ)さん

今月は、去年の十月に沖縄こどもの国の施設長に就任した高田勝さんを紹介する。高田さんは、小さな頃からいろんな昆虫や、小動物を捕まえてきては育て、繁殖させることに熱中し、現在は今帰仁村にある自身の農場で沖縄の在来豚である「今帰仁アグー」を四百頭飼育し、繁殖させている。今月は高田さんに沖縄の在来種の保存への思いや沖縄こどもの国の今後の展望について話を聞いた。

高田さんが生まれたのは東京都の品川区、都会のど真ん中だ。そんな都会に生まれた高田少年は、幼いころからずっと昆虫や小動物を捕まえることに熱中していた。ポケットいっぱいに幼虫をつめて帰ってきたり、アメリカザリガニをたらいにあふれるほど捕まえてきたり、小・中学生の時に夜の十一時から朝方まで一人でカブト虫やクワガタを捕りに行ったりする少年だった。それも、ただ捕ってくるだけではなく、どうしたら増やせるかという「繁殖」に興味のある少年だった。

中学生の時には、「ニワトリ」に魅せられ、国の天然記念物に指定されている十七種のニワトリ全種類を飼ったことがある強者である。その時に考えた、体はニワトリの大きさで、うずらのようにたくさん卵を産む交配種を実現させるため、大学は東京農業大学に進む。大学卒業後は進化生物学研究所に勤め、その後、縁あって沖縄県に移住し、今帰仁村で自身の農場を始める。その農場で沖縄の在来豚である「今帰仁アグー」を四百頭飼育、繁殖させている。

高田さんが現在熱中しているのは、沖縄の在来の「種を残す」ということだ。「アグー」はもともと神に供えるものであった。そういう昔ながらのものを残すことが大事だと語る。「アグー」などの在来家畜だけではなく、沖縄の在来米の保存にも力を入れている。今年五月にはこどもの国の田んぼで沖縄の在来米三種の植えつけも行った。秋には収穫し参加したこども達とおにぎりを作って食べる予定だ。

田植えも本来であれば、泥の中をこども達が植え付けすることによって自然と体に免疫抗体をつけるための昔ながらの大事な行事の一つであった。「種」の維持・保存は、「文化」の維持・保存とも密接なつながりがあるのだ。

沖縄こどもの国では、沖縄でしか見ることができない南の地区固有の動物をこども達に見て欲しいと考えている。今後、琉球弧(南西諸島弧)の展示ブースも作る予定だ。こどもの国に来て、まずは、ウサギやひよこなど動物と触れ合うきっかけを作り、それから発展して、こども達の知識欲求を満足させられる施設になることを目指している。

▼戦後文化シアター 今月のヒストリート

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カレンダーの表紙(上)と、7月のページ(下)。
▲カレンダーの表紙(上)と、7月のページ(下)。

梅雨が明け、本格的な夏到来です。そろそろ夏休みの計画を立てようと、カレンダーに向き合っている人もいらっしゃるのでは?

今月は、ヒストリートIIにおいて開催中の「アメリカ世からヤマトゥヌ世へ① 復帰の顔」より、『1972年のカレンダー(高等弁務官府発行)』を紹介いたします。

日本復帰の年に合わせて発行・配布された左のカレンダーは、上下開きの冊子版、表紙にはお正月らしく門松が描かれています。しかしこの門松、どこか違和感を覚えませんか?日米の国旗があしらわれていますね。実は冊子の中身も同様、日本・沖縄・アメリカが共在した内容となっているのです。

例えば昭和(和暦)の表記は一切ありませんが、沖縄の旧暦(一日と十五日)は毎月しっかり書かれています。また、天皇誕生日を含む日本の祝祭日と同時に、「慰霊の日」やお盆など、沖縄の祝祭日も記されています。さらに興味深いのは、7月4日「独立記念日」や「復員軍人の日」など、アメリカの祝祭日まで赤く塗られ、公休日として表記されています。

本資料からは、日・沖・米、三つの暦の上で暮らすと同時に、三つの価値観や思惑のはざまで生きてきた沖縄の人々の姿が垣間見られるのではないでしょうか。カレンダーには各月、親米意識の向上をあおるスローガンも示され、発行元の意図がよく伝わってきます。

しかし残念ながら、本資料に関連する情報は少なく、「毎年配布されていた」と記憶する人もいますが、いつどのような形で配布されたか、以前の年のカレンダーはあったのか等、分からない点があります。資料について何かご存じの方は、是非「ヒストリート」まで情報をお寄せ下さい。お待ちしております!