今月の人

子育て情報サイト 立ち上げに奔走中

214.若尾美希子さんさん(30)

 童具シッターという言葉をご存じだろうか?童具シッターとは良質な絵本とおもちゃでこどもを遊ばせ、その子の心と体の発達と興味を引き出すことを得意とするベビーシッターのこと。今回紹介するのは県内でただ一人の童具シッター・若尾美希子さん。子育てに悩む母親のための「子育て広場」を経営している。またそこでは同時に大人のADHDについて考え、共感しあえる場も開催している。

 「絵本と童具の広場がじゅまる」では、利用者に普段家で使っているおもちゃを持ってきてもらい、親子の遊んでいる様子を観察して必要な時にアドバイスを与える。「こどもが遊びに興味を示さない」などの悩みを抱える親や、発達障害を持つこどもの親にとってこのアドバイスは、迷いの中で張り詰めていた気持ちを解きほぐす言葉だ。広場には約百種類ほどの童具が置かれており、どれもこどもの自由な発想を促すようなものばかり。若尾さんはそれらの使い方や遊ばせ方も指導する。また本棚には絵本が六百冊、育児書も二百冊置かれており利用者はこれらの童具や本を自由に使って広場での時間を過ごす。「せっかく良い本を読んでいても誤った解釈をしている人が多い。ここでは育児書との付き合い方も教えます。書かれている内容を、実践を通して説明するとすんなり理解してもらえます」。沖縄は共働き世帯が多く、親がこどもと十分に接する時間が少ない。そのわずかしかない時間を叱ることに費やしている人も多いという。子育てに一生懸命取り組むあまり、思いとは裏腹に虐待してしまうことも。「大切なふれあいの時間、視点をちょっと変えるだけで親子関係はもっと幸せになる。こどもを中心にした見方を知ってもらいたい。少しでも子育てに悩む人の手助けになれば」と広場を運営している。
 「がじゅまる」ではもう一つの活動として「大人のADHDの会in沖縄」も主宰している。注意力が散漫だったり、集中力が続かなかったり失敗が多く自己否定をしてしまいがちな「大人の発達障害・大人のADHD」。この特性のため悩み、生きづらさを抱える人は多い。「私自身もADHDに悩んだ。同じような悩みを持つ人が集まって悩みを話せる場、共感できる場を作りたかった」と若尾さんは話す。
 これまでの経験を通して若尾さんには最近大きな目標ができた。「今本当にやりたいのは人と人をつなげること。子育て情報サイトを立ち上げ、困っている人と、その問題の解決策を知っている人をつなげるシステムを作りたい」。五月スタートを目標に関係者との調整などに現在奔走中だ。

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▼戦後文化シアター 今月のヒストリート

ヒストリートIIに展示中の
出征幟

市史編集担当/
TEL:939-1212(内線2273)
ヒストリート、ヒストリートII/
TEL:929-2922

 春の訪れを感じる三月です。先月末に閉幕した冬季オリンピックでは、各国を代表する選手たちが、それぞれの国の期待を背負って競技しました。その中で皆さんも、日本国を象徴するものとして、日の丸(国旗)に注目する機会が多かったと思います。
 今月ご紹介するのは、ヒストリートIIで展示中の「出征幟(しゅっせいのぼり)」です。出征幟には、写真のように日の丸と日章旗が描かれ、「祝(しゅく) 入営(にゅうえい)」と書かれています。入営とは、兵役に服すため兵営に入ることをいい、この幟は戦地へ赴(おもむ)く出征兵士を華々しく見送る為に作られました。召集令状が届くと、出征兵士は日の丸入りの出征幟の前で、日の丸の小旗を持った人たちに盛大に見送られたのです。県内では、那覇市に現存する染物店で、昭和一〇年代後半に出征幟を作っていました。
 本市では、一九四四(昭和一九)年一月、熊本へ出征した字美里出身の方から、出発の様子について証言が得られています。『美里からの戦さ世証言』から部分要約すると、「ラッパが奏でる行進曲の中、ヌンドゥルチヤーで必勝の神酒(みき)をもらって武運長久(ぶうんちょうきゅう)を祈願し、日の丸の小旗を持って県道に整列した人々によって万歳三唱で」送り出されたといいます。
 死出の旅にあたり今生(こんじょう)の別れかも知れぬ場面で、堂々と掲げられた日の丸。平和の祭典オリンピックとは、全く異なるプレッシャーや期待を背負わされた人々が、かつて「華々しく」戦場へ旅立って行ってしまいました。

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